利尻山登山道整備 その二

7月~8月にかけて利尻山で施工した登山道整備の紹介(その二)です。
前回は樹林帯での施工を紹介しましたが、今回は山頂直下、一番崩れがひどい場所の施工です。
 
利尻山の山頂付近はスコリアと呼ばれる火山礫の層で出来ています。この層は非常に崩れやすく、
歩くのはもちろん触れただけでも崩れます。そんな脆弱なる登山道は今、こうなっています。
 
イメージ 1深く溝状に掘れています。
本来は頭上の植物帯はつながっていたのでしょうが、登山者の踏圧と水の流れによりここまで崩れてしまったようです。
 
この場所は、利尻山では「3mスリット」と呼ばれ浸食が最も激しい箇所の一つになっています。
 
 
 
 
 
 
イメージ 5火山礫の層で出来ているのがわかります。
このスコリアの層は非常に脆く、壁を触るだけで崩れます。
 
豪雨の時には一日で数十cmも掘られることがあるそうです。
地面には小さなスコリアが浮石状になりとても歩きにくい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
今回の施工現場です。かなりの斜度があり、浮石が多いため下りでは転倒者続出でした。
上りでも四つん這いになって両手を使って歩く人もいるほど、ある意味危険な箇所です。
 
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ここに、ふとん籠工・テンサー工・植生ネットなどの
施工をしました。
 
施工目的は
1.土壌を安定させ植生回復を目指すこと
2.登山者が安全に歩行できるようにすること
を考え施工しています。
 
 
 
 
 
ふとん籠での施工
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ふとん籠に現場の土砂を詰め階段状に配置していきます。
ここは溝状の急斜面で、ロープが付いていますが恐怖を感じる場所でした。
 
テンサーを使った施工
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テンサーとは聞き慣れない工法ですが、地盤を安定させるための土木方法です。
利尻山では様々な工法が試されていて、テンサー工もそのひとつです。
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強化プラスチックの網を筒状にし、椰子マットを内側に
入れ土砂を詰めます。
印象としては土嚢に似ているような気がしますが、
土嚢よりははるかに利点が多い工法です。
 
 
 
 
 
 
イメージ 2椰子マットを内側に入れるため植生回復が早いようです。
 
施工して1~2年も経つと植物が芽吹きます。
 
このテンサー工は、本体が軽く荷上げが可能で、
現地の材料が使え、施工が簡単なので、今後の
山岳整備での可能性を感じました。
 
 
 
 
 
 
植生ネットを使った植生回復工
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広などく崩れた法面を安定させ、植生を回復させるための方法です。厳しい環境なので
ネットの破れなどは少々あるようですが、1~2年で植物が芽吹きます。
 
今回は、山頂付近で地元の人たちとこのような施工を1週間ほど作業してきました。
山頂付近では何年にもわたり地元の人たちが整備をされています。
往復10時間はかかる山の山頂付近で作業するには「早出・早歩き・休憩少なく・ヘッドライトで遅下山」
という過酷な労働です。また、避難小屋泊まりでの作業も疲れがとれません。
地元の人たちの熱意には頭が下がります。
 
今回の利尻山では、この他にもまた違ったやり方での整備もしています。
次回は石を使った施工や、利尻島の釣り(整備とは無関係ですが・・)を紹介したいと思います。