戸隠、飯綱山での登山道整備講習会

北海道山岳整備、代表の岡崎です。
10月の中旬で大雪山の実働が終わり、その後は本州の山で作業してました。
徳島剣山は今季3回目、そして初めての場所となった戸隠、飯綱山に行きました。
いつものごとく、登山道整備の「技術」が知りたいので来てくれと言われ
講習会形式での整備作業です。主催は環境省です。

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初日、まずは関係者と下見。
いつも現地に行くまでどんな侵食が起きているのかほとんどわかりません。
事前に情報を聞くのですが、侵食の規模、原因、周囲の状況、資材等々
なかなか正確なものはわからないんです。
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ですが、今回の山はいつもの「どうすんだ、これ!」と思うような崩れは無く
大きな崩れは少なかったように思います。
普段のメンテナンスと自然の復元力が高いためだと思います。
来てくれる人にほんのちょっとでも良いから
「近自然工法」が感じ取れるようにこの場所を選びました。
よくあるガリー侵食、カーブの頂点が崩れるとかなりヤバい崩れになります。
さてどうやって施工しようかな・・
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当日、台風も過ぎ去り絶好の天気。25名の参加者。
下見をして雰囲気がわかったのでいつものような不安はない。
楽しくできそうだ。
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木材は登山口から荷上げ。
森林管理署さんの好意で無償提供です(このあたりの木材は薪として売っているとか)。
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登山口から現場まで約50分。
現場でも立ち枯れの木を使います。
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施工はいつものごとく、
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて」
という感じ。
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複雑な作業をできるだけシンプルに分解して伝えること。
一つ一つはそれほど難しくはありません。
勘のいい人たちは後半は何も言わずともできるようになりました。
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とは言え20人以上が現場に固まると、狭い狭い。
見ている人は応援してます。それもとても必要なこと。
人間は感情の生き物です。理屈だけでは動けません。
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老いも若きも関係なく、作業をけっこう楽しんでます。
小難しい技術をわざとらしく解説するよりも「楽しかった」と
思ってもらえるほうが大事だと思います。講習会でもそれを大切にしています。
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そんなこんなで時間通りに完了。
施工前後。違和感なし。
少しの土砂が溜まってきたら施工したこともわからなくなりそう。
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ガリー侵食が埋まりました。
埋め戻しの資材は周辺の石材と立ち枯れた木の玉切り。
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資材としての土が足りないので、あとは「自然」に任せます。
侵食原因の流水処理はしていないので、この場所に水が入ってくるはず。
水と一緒に土壌も入ってくるでしょう。そうなれば強度が増す。
頃合いを見て排水処理できればベスト。
自然現象も利用して施工です。
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このカーブが崩れると道が大きなダメージを受けていたはずです。
カーブを保護するため、この曲木を使うというのは現地の人の発案。
いつも自分も同じことをするけれど、現地の人が考えてくれたことがうれしい。
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最初は「杭を使わず、斜めの階段」というのは言葉では違和感があったようです。
ですが、施工するとすべて理解できる。強度も使いやすさも。
近自然工法は自然現象を利用します。
自然現象は「あたりまえのこと」なんです
あたりまえのことは「腑に落ちる」んです。
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近自然登山道工法を理屈で言うのは難しいと思います。
強度計算も積算もできないと思います。
ですが自然にあっているということはほとんどの方が理解してくれます。
近自然工法がうまく使われるようになるには、システムの変化が望まれます。
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そんなこんなで現場は怪我人もなく、無事終了。
懐かしい人にも会えてうれしかった。
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すぐに苦手な座学。
技術的なことを求められていたけど、技術の話はほとんどしませんでした。
それよりも地域と山の関わり方を話すようにしました。
数回の講習会で技術なんか身に付きません。
それよりも楽しく山に関われるやり方のほうが大事だと思っています。
一番大事なことは「技術」ではありません。
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そして最後は飲み会。これも良かった。
ある人の言葉。
「何回も会議するよりも、一度一緒に動いて飲んだほうが早い」
そのとおりです。
人間は体を動かせる感情的な生き物です。
頭だけで理解しようとすること自体に無理があると思います。
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この飯綱山は信仰の山でもあるようです。
いくつもある石仏に手を合わせながら登る人をよく見かけました。
大事にされている山だということがそれだけでもわかります。
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あとはそういう人たちの思いを維持管理につなげるアイデアがあればいいと思います。
実はそれはとてもたくさんあるんです。
山関係者だけでなく、いろいろな人と山を繋げたいですね。

今回の講習会は、楽しく、なぜかうらやましくも思えるものでした。
またいつか、行きたい場所になりました。
関係者の皆さん、ありがとうございました。