新聞記事を見て思うこと

1月12日の北海道新聞朝刊にこんな記事がありました。
道内の国立公園の魅力を高め、外国人観光客を呼び込むための
官民連携の戦略会議を行なうというもの。


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観光客を受け入れるための看板設置や規制の緩和も焦点になっているらしい。

この手の記事を見るたびにいつも思うことがあります。
呼び込みたいと言っている方々は国立公園の維持管理の現状を知っているのだろうか。

大雪山だけでも約300㎞の登山道は、北海道・環境省林野庁等々が管理をしているが
どう見ても適切に管理されているとは言い難い。
登山道侵食はほとんどが放置され年々拡幅している。
それに対応する予算は少なく、整備して直される場所よりも
崩れる場所のほうが圧倒的に多い。
やってもやっても全体として良くなることはなく、悪くなっていくのを少し遅らせることが
出来る程度の管理は正しい維持管理とは言えないと思う。

直しようがなくなるほど崩れた登山道では
「崩れるのも自然現象だ」と言って手を付けない言い訳を聞くこともあります。

<登山道侵食の記録>
2006年の白雲岳直下の様子
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2016年の白雲岳直下。10年間でこれほど変わります。
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同じく2006年と2016年。
流水侵食もありますが踏圧侵食も大きな原因です。
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同じく2006年と2016年。
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こんなに崩れているのが放置されている登山道を
外国の方々に登らせて恥ずかしくないだろうか。
海外の国立公園では少しの侵食でもすぐに直されると聞いたことがあります。


沼の原へ登るクチャンベツ登山道(現在は通行止め)。
ここ十数年で侵食が拡大して、ある程度落ち着いたから
このままでいいと言った管理者もいます。
実際は昨年の豪雨で侵食がさらに深く広く拡大しました。
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御鉢平にある雲の平。
昨年、路床(歩行路)の土砂が数十㎝崩れて流されました。
法面が直角になっているので更なる法面の崩れが予想されます。
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各地の樹林帯でも、踏圧からの流水侵食で
段差が高くなっている場所は多々あり放置されています。
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素晴らしい紅葉やチングルマの群落が見事な裾合平。
よく観光地として宣伝される場所ですが、足元を見ると・・・
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崩れた木道が多々あり、足元に気を付けて歩かなければならないほど。
周りの土壌も流されて木道の基礎が傾くほど土壌流出しています。
登山者には「いつ直すの?」とよく聞かれます。
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整備をする者として、また北海道民として、この惨状はとっても恥ずべきことです。
看板に英語表記をするだけではどうしようもありません。
また、今以上の登山者が利用するならば今以上の登山道侵食が
起きることは想定しなければなりません。

自分は山岳地域を観光利用することには賛成です。
もっと言うと山を商売の道具として使うことはしょうがないと思っています。
ただし、商売の道具ならばもっとしっかりと管理をすべきです。

今までのエコツーリズムと言われるものは、
ただ観光客を呼び込むだけだったように見えます。
山に人は呼ぶけど崩れるのにまかせる、のは
山を使い捨てにしている、事と同じです。

山を使い捨てにして、崩れても言い訳を言って自己を正当化する。
こんな人間にはなりたくありません。

どうか現状の維持管理体制が破たんしていることを認めて
正しい維持管理へシフトしていくように、
利用と保全を本気で考えてほしいと願うばかりです。