朝日連峰での講習会

8月4日から8日まで
東北の山、朝日連峰での登山道整備講習会に参加してきました。
いちおう講師としての参加ですが、飯豊朝日の山々では登山道整備が盛んにおこなわれています。
勉強するつもりでの参加でした。

6月、7月、8月の出発前日まで、ほかの業務で忙しく、疲れはピークに。
家の中の階段でもふらつくほど。
朝日連峰の準備も出発日午前中に行ない、忘れ物だらけでした。
こんな状況でまともな講習が出来るだろうか、と不安がつのります。

                    まずは下見から。登山口は古寺鉱泉
      現地の人は歩くのが速い!作業道具を持ちながらついていくのはしんどかった。
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樹林帯の侵食個所ではかなりのガリー侵食が見られました。
また、それを止めようと整備された個所も。
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踏圧や流水で侵食され、段差が高くなってしまった場所が多々あります。
講習会ではこんな個所を整備しようかね、と決めました。
樹林帯ではよく見かける侵食事例ですね。
資材の確保や運搬が出来れば、崩れにくく歩きやすい施工は難しくありません。
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とりあえず何とかなりそうなのでほっとして、初日の宿は研修センターにて。
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飲み会です。
ビールは山形搾りです。
作りたて餃子にクマ鍋もありました。豪勢です。
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全く疲れのとれないまま、講習会当日。
20名ほどの参加者。
見知らぬ場所で作業する時、最初はいつもアウェーな感じがします。
施工を始めれば全く気になりませんが、顔合わせの時はいつも緊張してます。
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この日も歩くペースの速いこと。
また、暑いこと。晴天。山形では37℃だったとか。
北海道民には厳しい天候です。
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所々に冷たい水が出る水場があり、とても助かります。
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そしてようやく作業。
大雪山でも小笠原でも朝日連峰でもやることは変わらず。
自然の変化を見てそれに合わせるだけ。
資材は周りにあるものをできるだけ活用すること。
簡単ではないし、とっても疲れるけれどなぜか達成感はある。
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山に近い場所の人はチェンソー作業が出来る人が多いので助かります。
自分はあまり手出しせずに口だけ出してました。
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施工前後
「近自然工法」の考え方は
自然界にある構造物の構造を取り入れること。
杭を使った木柵工とはやり方は違うけど、違和感なく施工してくれました。
山をよく歩く人は自然の構造を見ているはずです。
その構造を再現したものは違和感がないはずです。
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歩きやすさもとっても重要。
時折通る登山者の歩行に注目しちゃいます。
思ったところを歩いてくれるか、とっても気になりますね。
あまりに注目するもんだから緊張してコケる登山者も・・。
何事もほどほどかと・・。
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初日の施工は数時間。
今度は大朝日岳小屋に向かって歩きます。この日は小屋泊まり。
この歩きも暑くてきつくてしんどかった。
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銀玉水の周辺。
自分はこれが見たかった。
十数年にわたって植生復元が試みられている場所。
植生とはどういう風に育っていくのかが気になってました。
施工業者が厚く敷き詰めたネットを剥がしたら植物が出てきたとのこと。
そうでしょうね。
植物にとって必要なのは土壌、水、そして日光です。
農家をしているとその辺が直感的にわかります。

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裸地化部が麻ネットやヤシネットで覆われています。
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植生が復元していたり、そのままだったり。
試行錯誤が見えます。
大雪山でも昨年から法面保護のためのネット施工が始まりました。
良し悪しは自然の変化をしっかりと観察するところから始まります。
大雪山はこれからですね。
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大朝日岳小屋に到着。
こんなに暑くて疲れた登山は久しぶりでした。
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この日は登山者が多く、小屋は満員状態。
テントを貸してもらい寝る場所を確保。
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この小屋の近く、金玉水でも施工の跡が。
これは侵食というよりも土砂崩れです。
でもテント場だったことも崩れた要因になっていたようです。
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粗朶を使った伝統工法が使われていました。
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この崩れが・・
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こうなっていくことを望みます。
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日が沈むころ、夕焼けがとてもきれいでした。
いつも作業しているときは、夕焼けを見ると「早く帰らないと」
と焦るのですが、この日はのんびり鑑賞できました。
夕焼けが大好きです。
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そして傍らでは飲み会が始まっていました。
飯豊朝日の方々の結束の強さの一因はこの飲み会にあるようです。
各自豪勢な食料やお酒を持ち込み、山の上とは思えない豪華な飲み会です。
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この講習会には懐かしい人も参加してくれました。
ここ数年の大雪山では山を治す動きが加速していますが、
きっかけを作ってくれたのはこの人だと思っています。
数年前、なんの実績もない自分を使い始めてくれたことも・・。
感謝、感謝・・。
ここ飯豊朝日地区でも大きな流れを作っていたようです。
当日はお酒を担ぎすぎてバテていましたが、その後大丈夫ですかね。
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この笑顔は隣におねえちゃんがいるからかな。楽しそうです。
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久しぶりのテント泊はよく眠れました。
そして御来光。
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きれいなもんだ。
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朝、小屋で少々の座学をして二日目の施工個所へ出発。
この日は酒田市で36℃だったとか。
朝でも暑い。とにかく熱い。
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二日目の施工個所は木柵の崩れの補修から。
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崩れた木階段も補修します。
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飯豊朝日の人たちは動きが速い。
考える間もなく、まずは動く。良し悪しですが、行動力は抜群です。

若者より動くベテランが多いのも驚きです。
不思議な気合をつぶやきながらテコ棒を使ってます。
「イノクニノヤツメ!イノクニノヤツメ!!」
どういう意味だろうねえ。不思議だねえ。
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施工後はみんなで検証するのも面白い。
施工の批判をされるのを嫌う人が多いけど、ここでは違ってます。
どこでもそうだけど施工のダメ出しを嫌う人は良い施工者ではありません。
この地域の施工意識のレベルは高いですね。
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その後、樹林帯に下ってまた施工。
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ガリーが深くて狭い。
大人数ではとっても施工しにくいですね。
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これも施工者が解説をして検証します。
とはいえ、自然が下す判断が一番重要ですね。
今後の変化を見てください。
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小さい場所でも、しっかりした資材を使うと施工も楽になり長持ちします。
施工前のシンキングタイムは重要ですね。
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そんなこんなで暑さにやられた3日間が終わりました。
締めはこの地域の維持管理に長く携わっている山形大学の菊池先生に。
先生のお話で印象に残った言葉があります。
「施工は個ではなく、群れにすること」と言われました。
自分も「施工物は連鎖させてすべてにテンションをかけること」と常に言って施工していました。
言葉は違いますが、意味合いは非常に近いと思っています。
自然をしっかりと見ていくと同じものが見えるのだろうか・・、ととても印象に残る言葉でした。
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残念だったのは、体力が残っていなかったこと。
皆さんについていくのが精いっぱいで余裕がありませんでした。
いつか、体力、気力が充実しているときに、今度はボランティアで行きたいですね。
自分は業務での作業よりも、ボランティア作業のほうが力が出ます。

個性的な面々、その人たちが作り出す雰囲気。
それに反応していく一般登山者や行政。
大雪山でも参考にできる事例が多々ありました。

これを糧に、今度は大雪山だな。