登山道整備技術指針が出来たとさ

6月3日
美瑛町にて、大雪山の関係者が集まる情報交換会が行われました。
約50人の出席。
今年度の各団体の予定や方針なんかを話す感じです。
自分も「合同会社北海道山岳整備」として参加しました。


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登山道整備においてはここ数年で「協働型」と呼ばれる
行政、民間団体、個人が一緒に作業していく形が生まれつつあります。
可能性や課題点が見えるようになってきたので、しっかりとした方向性が出来ると良いのですがね。
そういえば愛山渓の松仙園のことを聞くのをすっかりと忘れていました。
計画通りにやったらきっと後でめんどくさいことになると思うのですが・・。


話のなかでは全く触れられませんでしたが、ようやくこれが完成したようです。
大雪山国立公園における登山道整備技術指針 2016年改訂版」
と「登山道管理水準」
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環境省はここ数年で2千万円ほどかけてこれを作成していました。
会議の中で全く触れられなかったのが不思議です。
自分も作業部会の委員としてこれの作成に関わっていました。
とっても分厚い。読むのが大変だな、これは。
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300ページほどもあるものですが、
登山道整備の事例や解説で150ページ以上に関して自分が作った資料になります。
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侵食タイプごとに様々な方法を提唱しています。
環境省は名前を出していませんが、自分が行なってきた施工方法は
「近自然工法」です。
ここ十年ほどで行なったいろいろな場所での施工事例を挙げて解説しています。
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様々な侵食原因をはじめ・・
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高山帯や樹林帯等々での施工方法や考え方の違い
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施工前後、経過観察、課題点も隠さずに・・
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作業のポイントは図解も入れてわかりやすく
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登山道整備に関わっている人なら、少しは役立つかな・・
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改定前のものよりはかなり具体的です。
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新たな資材を使った施工方法も載せております。
これはパークボランティアの方々と頑張ったときのものですね。
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課題ある事例は、各地でよくある事例です。
失敗から学ぶことは多々あるのでこれを載せることはとっても大切です。
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ぜんぜん具体的ではないけれど施工管理方法「PDCA」もようやく。
まあ、これを細かく具体的にするのは大変だけどね。
施工時には必ず考えなければならない方法です。
言葉が載っただけでも良しです。
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平常時と豪雨時の比較も。
なかなかこんな時には歩かないもんだからこういう資料は少ないんです。
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大雪山の技術指針だけど、小笠原諸島での事例も多くあります。
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「基礎木」「木当て」「石当て」なんかは自分が勝手に作った名前。
小笠原でも大雪山でも自然の摂理は同じです。
考え方や方法を合わせられるかどうかです。
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これらの解説事例は2015年の2月までのものです。
それからも様々な場所での整備を行なっているので、
正直、もっと良い方法や作業ポイントや技術の増加があります。
今後も改訂版を作っていくほうが良いと思います。
これが完成形ではありませんね。

自分の5年前の考え方や技術レベルは現在は全く違います。
たぶん5年後には同じことを考えていると思います。
自然の中にはもっとたくさんの技術のヒントがあるはずです。
今後もそれらを見つけていこうと思っております。

そして一番大事なのはこれを使う人の感性です。
この技術指針を作る過程で、自分は委員をやめさせてほしいとお願いしたことがありました。
ある人は、この指針や管理水準を理由に整備をやらなくて良い理由を作り上げてきました。
侵食はある程度したら止まる場合もある、それまでは手を付けなくても良い場所もあると。
確かに侵食が最後まで進むと岩盤が露出し、進行は弱まります。
しかし、崩れる前を知っている地元民としては、何とか侵食を止め復元してあげたいと願っています。
自分が提供した技術や資料は侵食を止め山を治すためのものです。
提供したものでそんな結論が出るくらいなら委員から外してくれと、頼んだ経緯があります。

この技術指針や管理水準は使う人の感性によってさまざまなとらえ方が出来ます。
ぜひとも、地元の方々はこれを読み込んでもらい
正しい「指針」として使ってほしいと願っています。

近いうちに環境省のHPに載るんではないかと思います。
ただし、この解説書を読んでも技術は身に着きません。
技術とは何度も何度も経験を積んで臨機応変にしていくものです。

もし、地元の山を治したいと思ったときには声をかけてください。
実際に施工をすることでこれらの内容が理解できてくると思います。
一緒に山を治しましょう。