徳島県剣山での整備

4月24日~29日まで
徳島県の剣山で登山道整備や講習会を行なってきました。

剣山は四国で2番目に高い山で百名山にもなっており、
昔から行場として信仰の山でもあったようです。
山小屋の方々によるこまめな維持補修はされていますが、
昨年の台風被害により補修程度では済まない個所も出てきて、
どうしたもんかと声がかかりました。

正直言って現場を見るまではいつもプレッシャーがかかります。
登山道侵食程度は何とでもなりますが、土砂崩れの場合は手の付けようがないこともあります。
現地の方が出来ないことをできるだろうか・・・

まぁ、行ってみなりゃわからない!!

というわけで徳島駅に着いて、
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美馬市穴吹駅に着きました。風情があります。
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すぐそばには吉野川
釣り人にとってはドキドキするような川です。
美馬市から車で1時間半ほどで剣山の登山口に着きます。
その間、脇に見える渓流の見事なこと。
こんな川で釣りをしたいと心底思えるきれいな川でした。
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剣山にはいくつかのルートがあります。
こじんまりした山なのでリフトに乗りながら、もう山頂付近が見えています。
もちろん山頂には行かないけどね。
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歩き始めてすぐ急傾斜の登り。
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細かい間隔で階段があり、杭のメンテナンスも常時してあるようです。
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何よりも細かい間隔で排水の溝が掘ってありました。
流水による侵食を理解している施工です。
現地の人の自然を見る目がよくわかります。
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現場の登山道は斜面をトラバースする個所が多く、
礫が集まった地質なので非常に崩れやすい状態です。
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谷を渡る個所では崩れが深くなり、巻き道が付きかけていますが、
その巻き道も崩れる可能性が高い状態です(赤線が元の道)。
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斜面をトラバースする個所では、杭による土留めがありましたが
土留めごと崩れかけています。
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6mほどの木の橋も崩れかけ非常にワイルドな道です。
だけど、これはとっても直しやすい個所ですね。
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この道は崩れたら直しようがありません。
崩れる可能性も見えますが・・。
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礫の山は本当に崩れやすい場所が多々ありました。
時間をかけてできるならば植物の根張りの力を使って整備したいのですが
とりあえず人が不便なく通れるようにしなくてはなりません。
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今回は地元の林業会社「ウッドピア」さんが施工を担当します。
この数日間で徳島県民局、ウッドピア、自分(北海道山岳整備)とで
どのように施工するのかを決めていきます。
下見の後は「近自然工法」の考え方を伝えるために座学を開いてくれました。
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次の日からは実践の施工です。
「自然界の構造を再現する」と言う近自然工法の理念は
なんとなく理解していただいたようですが、
それを実践するのはちょっと勝手が違います。
現場に行くと何をしたらいいのやらわからなくなるもんですね。
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だけどさすが林業の方々です。
イメージを伝えるとチェンソーでその通りにしてくれます。
技術がある人は見ていてとっても安心できます。
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とりあえず、従来工法との違いを理解してもらうために
杭を使わない木柵階段を少々施工。
施工前、歩くだけで崩れていた場所。
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施工後、付近の倒木と礫や石で段差処理です(法面処理はこれから)。
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作業中はこんな奴や・・(オオダイガハラサンショウウオだとか)
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こんな奴が出てきます。
青く光るごんぶとのミミズ。ウナギ釣りには一番いい餌だとか。
うようよいましたが北海道にはいないもの。初めて見ました。
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崩れが続く岩礫場所では、自然の状態を再現します。
施工前
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施工後、
流れてきた倒木が岩に引っかかり、
それに石材が積み重なって安定している状態を再現しています。
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こちらも施工前
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施工後、積み上げた石組みの天端が道になっています。
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階段状になっている踏み面のおかげで自然に歩くことが出来ます。
すべてを石組みでも良いのだけれど、倒木と石材が混ざっているのが登山道ですね。
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剣山整備は今回の指導で終わりかと思いきや、もう少し続きそうです。
近自然工法を理解してくれた地元の方々が次の機会を作ってくれました。
「理念はわかるが実践は難しい、また来てくれ」というもの。
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これはとてもありがたい状態です。
というのも、近自然工法を表面的に理解してしまったときには
技術を簡単に考えてしまうため正しい施工にはなりません。
難しいと感じることが出来るのも、日々技術をもって作業している方々だからだと思います。
「簡単にできるからもういいよ」と言われたら悲しいことでしたが、
そうならなくてホッとしました。


このルートには侵食個所も多々ありますが、とても雰囲気の良い場所がたくさんありました。
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自然を理解しつつ施工していけば、きっと正解が見えてくると思います。
自分もまだまだ見えない部分がありますが、
地元の方々と一緒に自然に近づける施工をしていきたいと思います。

また、徳島の隣、高知県は近自然工法の先駆者、福留先生の地元でもあります。
なんじゃこりゃ、と言われないように日々全力の作業が始まります。
楽しみだ。