小笠原遊歩道整備・・思うこと

小笠原遊歩道整備がようやく完了し、3月に北海道当麻町に帰宅しました。
いつもながら、楽しい作業でした。
いろいろな事象を体験し、勉強もできました。
作業に来てくれる人に理解してもらうには、自分がなんとなく見えているものを
はっきりと見せ伝えなければなりません。
この伝える作業は疲れるけれど本当に勉強になりました。


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今回の作業は前年度までの補修も含まれています。
その補修を検証すると施工の良し悪しや方向性が見えてきます。
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南崎のぬかるみ防止。昨年行なった路面処理の施工です。
おおむね良い、というよりは思った以上に良い感じに。
右側の少々小高く、ぬかるまない場所を作った施工ね。
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ぬかるみ時の補助的な歩行路のつもりでしたが、メインの歩行路になっていました。
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歩行者は、施工に気が付くことなく想定通りの場所を歩いています。
ぬかるみ対策としてこの方法は使えますね。
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この場所も施工してありますが、一見どこを施工したかわかりません。
ただし、ぬかるみ時には施工場所が活躍しているようです。
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母島、小剣先の路面処理施工。
この場所は谷側が踏圧で崩れつつあった場所です。
幼稚園児も通る場所。しっかりした施工で歩きやすく、崩れなくしたかった。
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おととしに石を並び替え、木を追加して様々な段差を作ってみました。
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今年見るといい感じに変化しています。子供も不安なく歩いています。
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施工後の土壌が安定し、植物が伸びてきましたね。


父島でも段差処理をした場所での補修はほとんど必要ありませんでした。
200段ほど施工したうち、補修や追加がわずか3段。
大きな崩れは見られませんでした。
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簡単な段差処理でも植物が復元しています。
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ただし、植物の復元が見られない場所もある。
土留めをして土砂の流出を弱めた場所。
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植生復元しない原因は、
小さな芽が出てきたときに土壌が被り埋まってしまうことのようです。
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土が流れてきて埋まったり、流されてしまったり。
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小笠原の土壌侵食も北海道の凍結融解現象にそっくりな崩れ方をしています。
法面の裸地化部が細かく崩れていく現象。
寒い地方では霜柱がこの現象の原因なのですが、
ここ小笠原では乾燥が原因で起きているようです。
この現象を止めるには木柵土留めよりは裸地化部を覆うことが必要になります。
小笠原の場合、これだけ新芽が出ているのならば、
一時の土壌被覆でかなりの植物が復元すると思います。
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そして土壌の裸地化が一番気になったのが、ここ千尋岩の終点。
ハートロックの上部です。
多い時には一日70人ほどの利用者がここでお弁当を食べているようです。
もともとはヤギの食害により裸地化が進んだようですが、
現在は雨滴や流水、乾燥、そして歩行者の踏圧による土壌流出が続いています。
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2013年との比較
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2016年、土壌が10㎝ほどなくなっているでしょうか。
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こちらも2013年の千尋岩。
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2016年には手前にあった植物群はなくなっていました。
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2013年
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2016年。あまり変化がないように見えるけど数㎝~10㎝ほどは地盤がなくなっていると思う。
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昔は、海から見えるハートロックは赤くなかった、と言う地元の人もいます。
現在のハートロックはこの崩れて流れた赤土が赤く見せている、と言われています。

この裸地化した場所に、いつの日か植物を復元させれればどんなに楽しいことか。
その時には赤くないハートロックになるかもしれないけど・・。

方法はいろいろとあります。
こんなことでも土壌は溜まります。
この石の並びはあまり崖側へ行かないようにと地元の人が並べたようです。
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こんな少々の石を並べただけでも、背面には土壌がたまっています。
ある程度のしっかりした土留めが出来れば土壌の流出は抑えられそうです。
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土留め、土壌被覆、踏圧からの保護、等々を考えて、
単年度ではなく長い目で少しずつ進めていけば
きっとこの裸地化部にも植物が復元してくれると思います。

今年も新たな技術を用いた施工をしました。
それが来年以降どうなっていくのかが楽しみです。
施工がうまくいかなかったとしても、それはデータの蓄積となり
検証し、続けると小笠原にあった施工になっていくと考えます。
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こんな感じで、勉強しつつ、全力で作業できました。
一緒に作業した人も30人を超えています。
皆さん、お疲れ様でした。

そして今回は初めての観光が出来ました。
今までは仕事ばかりでほとんど観光らしいことはしなかったのですが、
ゆっくりと見たりガイドさんに教えてもらったりすると本当に楽しい。
その話はまた今度に・・。
小笠原諸島、良いところでした。