小笠原母島遊歩道整備・・・石門へ

さて、母島です。
                   29日の朝に父島から、ははじま丸に乗って約2時間で母島へ


父島の待合所
母島行きの人たちでかなり混んでいます


ははじま丸


母島到着
なんとなく父島より暑い気がする
雰囲気も違う


ゆっくりする暇もなく、現場へ
現場は「石門」と呼ばれる母島でもコアなゾーン
希少な動植物の宝庫です


この日は東京農大のボランティア部が
荷運びの手伝いをしてくれることになっていました。
たぶん屈強と思われる5名が参加。
総勢十数名が来島していましたが、
いろいろなボランティア作業に分かれていたようです。
荷運びに来た連中は一番ハードな労働になったな。


現場付近から石材を確保
ただし、希少な(母島の石門にしかいないものも
多数いるようです)昆虫や植物を傷つけないように配慮しての作業。
踏圧で傷まないように一列になって石を手渡し。


昆虫の専門家も同行して付近を調べます


こいつがいたら作業は別の場所に移動
固有種のマイマイ(カタツムリ)だそうです
幸い作業現場では見かけませんでした

でもねェ こんなに小さいんだ
よくよく見ないとわからないよ


こいつがいても作業中断
こいつの仲間は石門のここにしかいないフナムシらしい。
これも小さかった。5㎜くらい・・。
石集めの時には一つ一つの石をひっくり返して確認してから取り出します。


帰りには昆虫の専門家とガイドさんが東京農大生に少々の解説をしながら。
大学生、荷運びよく頑張った。


次の日から作業開始。
石門は非常にコアな場所なので基本的に整備はできないようです。
ただし、自然に起きる崩壊ならばよいのですが、
ルート上では人為的に起きている崩れが多々見られます。
ガイド同伴の登山者も来ますが、ここでは登山者よりも調査や作業での
利用者数のほうが多いそうです。
自分は人為的な崩れも放置するのが自然だ、とは思えません。
そんなこんなで、とっても難しい調整をしていただいて、
なんとか少々の整備をすることができました。
施工よりは調整のほうが大変です。
関係者の皆様、ありがとうございました。


今回の崩れの多くは斜面をトラバースする場所です。
踏圧により土壌が谷側へと崩れ、踏み面がなくなっていました。
このままではいよいよ歩けなくなります。


これを直すには木材と石材が必要。
石材は学生が集めてくれた。
木材は地元のガイドさんたちが頑張ってくれました。


斜面下にある倒木などを長いまま引き上げます。
植物に配慮して作業道は一本、急傾斜。


施工開始
いつものごとく細かいポイントをみて、細かい作業。

なんといっても狭すぎる。
7人いても2人でも作業のスピードは変わらないんだな。


土壌が崩れ、根っこが浮いていた場所。
歩行者は根っこの上をそろそろと歩いていました。
しっかりと埋め戻して歩行路が復活


こんなに浮いていた場所も・・
普通の道に戻りました


よくこんな綱渡りをしていたもんだ
斜面下に植物が復元しますように


あるいはこんな場所
倒木があり、それを避けるために土壌が削られていた場所。
倒木の上には植物があり、雰囲気は良い。
倒木は残したいけど路面は崩したくない。


この崩れを・・
曲がりのきいた倒木を一本キメる。


根が浮いていたけど・・
石材で足場を確保、土壌の崩れも止まるでしょう


下るときにも・・
崩れようがありません。もう大丈夫。


すべての施工はこういう努力の上に成り立っています。
木材を長いまま運ぶのはたいへんだ(許可を得た倒木ね)。


石材も担いで歩いて・・たいへんだ。
(石集めも昆虫に気を付けてね)

荷上げ終わって力尽き、痛む足をさすりながら何思う。


付近で見かけたトラバース施工を見て思うこと。
土留めでよくこういう杭施工を見かけます。
簡易的なものにはこういう施工も多いですね。
確かに一時的には問題ない施工です。
ただし、時間がたつとどうなるか・・
自分の施工では杭はほとんど使いません。
様々な固定のなかの補助として使う程度です。
また、あまり細い枝のような木材も使いません。
自然界の構造に杭はほとんどなく、
登山道で見かける自然の土留めでは細い枝はほとんどありません。

細く、固定がしっかりしていないので簡単に外れてしまいます。

法勾配が急な場所では杭の効きは非常に悪くなります。
また、杭が崩れるときには地盤をほぐしてしまうことが多く、
施工物が崩れた時には施工前よりもひどい状況になることがあります。





















          「自然界の構造物の構造を再現すること」
             近自然工法の基本のひとつです。
      方法は場所に合わせていろいろですがうまくいくとこんな感じに。
                     20142月に施工した場所
施工した皆さん、覚えていますか。むさくるしい男6人で直した場所です。
施工直後はこんな感じに
一年後は植物が復元し・・
2年後も植物が伸びている


ここもトラバース部の土壌流出場所。施工が大変だった
施工直後。いろいろな方法で木材と石材を固定
一年後。思った以上に植物が復元
2年後。植物がますます元気に

近自然工法は「生態系の復元」が大きな目標です。
そのために「生態系の底辺が住める環境を復元すること」。
登山道では「安定した土壌環境を作ること」を考えます。
歩きやすくすることや自然っぽく見せることが目的ではありません。
ただし、踏圧を防ぐためには歩きやすさを考えなければなりませんし、
自然の中には直線・平行・等間隔はほとんどなく、
水の流れや土留めの成り立ちを考えると施工時にはおのずと自然の形になります。
 
しっかりとした土台を作れば、あとは自然が自ら回復します。
それこそ自然に成るんです。
自分はそのきっかけが作れれば良いと思っています。
もっと簡易な施工をしてくれとか、簡単にできることを、
とか言われることがありますが、自分にはできません。
ただし、どんなときにも施工は最低限にしようと心がけています。
人間が自然に手を加えるのは最低限で良いんです。
とはいえ、最低限の施工でもこれだけの資材と労力がいるけどね
 
今回、母島の方々にもかなりの苦労をしてもらいました
この施工がどう変化していくのか、楽しみです(不安もありますが・・)
完成させるのは自然です。自然の力を信じて待つしかないですね。
難しい施工場所が多かったけど、とても楽しい施工です。
あと数日ですべての施工が終わる。
うれしいんだか、さびしいんだか・・。