美瑛富士での登山道講習会

8月30日

美瑛富士に向かう登山道で整備技術セミナーが行なわれました。
この登山道は毎年整備されている箇所がありますが、崩れてしまう施工物も多くありました。

今回はただ整備をするのではなく、「なぜ崩れたのか」「次はどうしたらよいのか」ということを
考えながら施工することになりました。

実はこのことは画期的なことです。
土木作業では「PDCA」を行なうことが基本の一つと言われています。

P-Plan:計画を立てる
D-Do:実行する
C-Check:評価する
A-Action:改善する

これは土木業界だけではないですが、管理業務を行う上で非常に有効な手段です。
自分が行なってきた登山道整備はまさにこれの繰り返しでした。
時間はかかりますが、「なぜ崩れたのか」をよく考えると侵食原因が理解でき
崩れにくい施工を行なうことができるようになります。

数年前からPDCAという言葉を使い何とか現場に取り入れたいと思っていましたが、
今回、環境省が講習会で実践してくれました。

環境省が呼びかけて、集まってくれたのは地元山岳会や
大学の先生、学生、他山で登山道整備をしている人など20名ほどが参加してくれました。

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ガリー侵食が激しかった場所に
昨年、歩きやすさ改善のため、木による階段を設置しましたが
今年の豪雨で、いくつかの段が崩れていました。
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こちらも階段になるように土壌で平面を作ったのですが
土がすべて流されてハードルのようになっています。
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この状態で、また同じように直してしまうと、また同じように崩れます。
ここで考えるべきは 「なぜこのように崩れてしまったのか」 です。

PDCAのCーCheck:評価ですね。

どう見ても、ここでは流水の量が多いんです。
豪雨時には少なくともガリーの半分くらいまでは水が走っていると思われます。
水量多く、水圧が高いと施工物は簡単に崩れます。
崩れの原因は水の量が多いこと。

ではこれにどう対応するか。
PDCAのA-Action:改善です。

流水への対応は大きく分けると二つあります。
一つは水が流れても崩れない施工物を作ること。
二つ目はは流れる水の量を減らすこと。

一つ目案では施工物は大きく頑丈にしなければなりません。
資材が多量に必要になりますが、資材やそれを現場に運ぶ労力はありません。

二つ目案は、現場周辺をよく観察すると上部に排水できる個所がありそうです。
水の量が減れば小規模施工でもいけそうです。

ということで改善策として「導流工による排水」を選択しました。

やってみれば非常に単純なことなんですがね。
PDCA、なぜか実践されていませんでした。

荷上げした木材での導流工(排水)です。
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施工は簡単。効果は高いと思いますよ。
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流水が多そうな場所には越流してもさらにもう一つ。
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この導流工は「近自然工法」での考え方ですが、
PDCAの判断により導流工を選択する」ということが考え方、
「木材を固定して排水工を作る」ということが技術です。

考え方をしっかり理解できれば、簡単な技術でも近自然工法は実践できます。
逆に、石を組んだり木材を固定できても考え方が理解できなければ
正しい近自然工法にはなりません。

近自然工法の福留先生には「考え方をしっかり理解しろ」と言われていました。
いま、その意味がはっきりとわかります。

近自然工法を理解するにはPDCAが不可欠です。

施工物が崩れたときこそ、学ぶチャンスがあります。
謙虚になり自然が教えてくれることを理解できるようになりたいものです。

良い講習会でした。