今年の仕事④・・・大雪山登山道整備講習会

大雪山では登山道整備に関わる方々を対象に
様々な技術や考え方を知ってもらうために整備講習会を行なっています。
 
これは環境省が主催の事業ですが、年3回ほど開催されており
自分は講師として作業をしています。
 
シーズン初めの6月下旬、黒岳で25名ほどが参加の講習会がありました。
 
 
   まだ7合目より上は雪でルートが見えません。リフトで上がる区間(5~7合目)での作業です。
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                      二班に分かれての作業。
            付近の倒木や石材を使い導流工や段差処理を行ないました。
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こちらは段差処理。
流水の動きを見て木材の配置を考えたり
杭を使わない方法で木材を固定したりと
今までの整備方法とはちょっと違う方法や考え方(近自然工法)を伝えました。
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 林野庁の方々やりんゆう観光の方、ビジターセンターの方々など
思ったよりも多くの人が参加してくれました。
黒岳山頂へのルートはきめ細かい整備が行なわれていると聞きます。
近自然工法の考え方が少しでも使われるとありがたいです。
 

 
10月初旬には旭岳、裾合平での講習会がありました。
こちらも20名ほどの参加者。
遠くは札幌や黒松内から来てくれた人もいました。
 
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段差処理の施工前後。
こういった講習会に数回参加している人は、
これくらいの作業は軽くこなしてくれるようになりました。
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見た目、いいですね。
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作業はいくつかの班に分かれて作業。
作業者によって感性が違うので形も違ってきます。
基本ができているのなら、いろいろな形があって面白い。
作業者のイメージを大切にしていきたいもんです。
施工前後。
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この施工が保たれるようにモニタリングとメンテナンスは必須です。
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こちらも施工前後。
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作った段差処理が崩れないように、また登山道が水路にならないようにと
導流工も施工しました。
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上流からの水は排水されます。
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導流工は歩行者にとっては歩きにくい時もあります。
歩行の邪魔にならないような配慮もします。
施工前
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施工後。水は右へ登山者は左を歩き石階段を使うという想定です。
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ちょっとやりすぎてしまったかもしれない個所。
これも導流工ですがちょっと要塞のようになってしまいました。
来年は効果と印象を検証して判断します。
一生懸命作業することは大切ですが、目的は作業したものが
しっかりと機能するかどうか、自然に溶け込んでいくかどうかです。
施工者としては問題あれば撤去も受け入れなければなりません。
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皆で考え、施工し、検証し、再施工する。
そういうサイクルで施工をしていきたいもんです。
 

10月中旬、トムラウシ登山道での整備講習会。
新得山岳会の方々やガイドセンターの方などいつも参加してくれる人のほかに
大雪山や知床のガイドさんの参加もありました。総勢20名ほど。
 
 
こちらでもやり方は同じ。
皆で考え、施工し、検証です。
 
チェンソー作業も慣れた人がいてガンガンやってくれます。
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一人では運べないような木材もガンガンと。
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皆で考えて作業するときの苦労点。
監督さんがたくさんいるので作業が進まなくなる時があります。
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この講習会は「石材のないところでの施工方法」
というのがテーマの一つでした。
そばには太い倒木があるのでそれを何とか使ってみようと考えていましたが
大仕事なので、できるかどうかは作業してくれる人次第でした。
でも作業を始めてすぐに「大丈夫だ。できる」と確信するほど
参加者の熱意がありました。
 
施工前後
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倒木と土砂だけで見事な階段ができました。
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倒木をひっかけ固定し基礎にして、木材に細工して組み込み、
隙間には土砂を入れて、玉切りにした木材を固定して・・・。
いろいろやってます。
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木材なので、今後、腐食による崩れのメンテナンスは必要です。
 
 
上の場所は流水侵食が大きいと思ったので導流工も欠かしません。
階段工の直上部に流水処理の導流工です。
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チェンソーで木を切る人。
木を運ぶ人。
土砂を集める人。運ぶ人。
細かい作業をしてくれる人。
役割分担がばっちりとできたときは個人の負担は少なくなります。
チームで作業することで苦労よりも楽しさを感じてほしいと常々思います。
 
 

近自然工法は「考え方」と「施工方法」の両方を覚える必要があります。
講習会ではその一部しか伝えることができません。
ですが、何度も作業することにより「なんとなく」を
つかむことができれば視点が変わりいろいろなことが見えてくると思います。
 
講習会は施工の楽しさ、可能性、難しさ、役割、いろいろなことが発見できます。
今後も講習会での作業ができればうれしいですね。