千尋岩でもやりました。

小笠原父島での登山道整備は、毎年ハーロックルートと呼ばれる
千尋岩への道を行なっています。
今期で5年目になりました。
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終点の千尋岩はびっくりするほどの素晴らしい眺めなんですが、
いつも裸地化と土壌流出が気になっていました。
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5年前と現在の写真です。約20㎝は土壌が無くなっています。
この基準杭もいつまでもつでしょうかね。
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こちらも5年前と現在の様子。
一見変化はないように見えますが・・
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根の部分を拡大してみると、やはり土壌が無くなっています。
一部分だけでなく、全体が減っているので流出している土壌の量はかなりのもんです。
海から見るとハートロックは赤く見えますが
この流れた赤土が赤く見せているのかもしれません。
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3年前にはとりあえずでも侵食を止めなければと、一部で土留めを行ないました。
斜度がある場所は踏圧だけでなく流水によるガリーも見られます。
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高山帯と違い、植物の復元力は高いので、土壌が安定すれば
土留めが崩れる前に植物によって土壌が固定される可能性に賭けて見た場所です。
施工前後。
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施工から3年経つとこうなっています。
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もう少し植物がはびこれば、木柵土留めが崩れても
土壌は崩れなくなりそうです。思った以上の復元です。
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ですが、土留めだけでは植生の復元が起きない場所もありました。
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木柵土留めで作った小段からは植物が復元するかと思いきや・・・
3年経っても兆しが見えませんでした。
観察すると、芽は出てきているのですが、土留めを越えて落ちてくる土砂のために
芽がすぐに埋まってしまっていました。
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こういう時に活躍してくれるのが、これですね。ヤシネット。
小笠原なら一年だけでも良いから土壌が安定できればきっと植物が復元するはず。
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そしてここでも・・
今期は試験的に少しだけヤシネットによる施工をやらせてもらいました。
赤土の流出を食い止める作戦です。
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大雪山でもやりました。あれです。
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まずは1m×15mを縦に半分に。
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周りから土砂を集めて・・
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ネットの上に適量を盛ります。
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良い感じです。
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そして海苔巻きのように巻く。
大雪山と同じ絵ですが、風景が違います。これもまた良いです。
並んでいる数m後ろは断崖絶壁です。
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また土を集めて・・
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巻く。
皆さんすぐにコツを覚えて、「密に締めろ!!」「膝を使え!!」
などと掛け声が飛びます。
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直径10㎝以上の土留めがすぐにできます。
これを丸太や石材でやろうと思ったらどれだけの労力が必要か・・
考えたくもないですが、現地に礫や土砂があればネット施工は簡単です。
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べた張りも試しています。
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踏圧や乾燥による土壌浮き上がりで侵食されている斜面。
一部にネットをべた張りして様子を見ます。
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ネットと路面に隙間ができないように丁寧に作業します。
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見た目はワイルドな人たちでしたが、作業は繊細にこなしてくれました。
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流れてくる土砂がこの土留めで止まり、植物が育つ土壌環境が出来ますように。
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これ以上の土壌流出が止まりますように。
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まずは試し。結果を観察し次につなげていく。

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自然は人間の思い通りにはなりません。
手をかけて、育てるつもりで。
技術力よりも、自然の変化に合わせていく心情を大切にしたいです。