小笠原父島遊歩道整備、いろいろな方法でいろいろな場所を

父島での遊歩道整備も予定通り進み、ほとんどの整備個所が完了しました。
この時期の小笠原は最高気温は20℃以上の日が多く、施工には最適な環境です。

                地元の人は寒い寒いということも多いけどね。
            仕事するときは「つらくてもつらくない」「寒くても寒くない」のさ。
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今年の宿はナインボール
部屋が広く、冷蔵庫から食器まで完備、とっても快適です。
下の階が居酒屋とカラオケルームとは思えないほど静か。
すべて自炊で済ませていたら野菜不足だったらしく、口内炎が多発。しんどい。
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例年はこういう段差処理の施工が多かった。
地元の施工に関わってくれている人はこれくらいなら簡単になってきた感じです。
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いろいろな場所を見て使える技術を選んで・・
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1時間もあればこんな感じに。幼稚園児でももう大丈夫。
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関わってくれる地元の人も様々です。
役場の方、ガイドさん、環境省、東京都、小学生 などなど。
この日は副村長も参加(毎年来てくれます)。
みんなに作業を見られて緊張している?チェンソー使い。
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50㎝以上はある段差。
何が使えるか。どこが使えるか。答えは一つではありません。
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木当て、石当てで木材固定。木材の向きや角度を考える。
何を補助固定にするか。見た目の不安はないか。踏み面の詰め方はどうだ。などなど。
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今まで父島ではあまりやらなかったトラバースの危険個所整備。
崖下に向かって土壌が崩れて歩行路が狭くなってしまった場所。
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こんな感じに。路面が広がり安心感が出ました。
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小笠原に限らず、こういう場所は結構あります。
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木材と少々の石材、土壌で施工できます。
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施工方法はいたって簡単に見えます。
とくに言葉で言うとこれだけ。
木を固定して・・
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石を詰めるだけ。
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だけど施工した人はわかっているはず。
どういう考え方で
どういう発想で
どういう技術を選んで
何に気を付けるべきか
簡単な施工に見えますが、考えるべきこと、しなければならないこと、気を付けること
たくさんあるんです。
でもなぁ、言葉や文章ではニュアンスは全く伝えられない。
どうしたら良いだろうかね。


近自然工法で整備するとき、自分は考え方と技術をはっきりと分けています。
どちらも必要ですが、考え方がわからない場合、
技術だけでは近自然工法にならないことが多いと感じています。

考え方とはなんぞや・・言い始めるときりがないですが、
自分が重要視することのひとつは「自然の構造を再現すること」です。
自然再生・環境復元をしている方々はたくさんいますが
「自然構造の再現」を考えている人は非常に少ないようです。
自分にとってはこれがとても楽しく、興味が尽きない事柄です。

例えば小笠原の道を歩いているとこんな根の張り出しをよく見かけます。
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よく観察すると根がある場所の山側は土壌が流されていない。
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この構造を再現すると、こういう場所で使えます。
踏圧で土壌が少しずつ谷側に流されている場所で・・
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木材を当てて土壌の流出を止める。踏圧にも全く問題ない状態になります。
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ここも同じく。
木を当てて石を詰めるだけ(言葉で言うとね)。
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施工したことをわからない人がほとんどです。見た目は非常になじんでます。
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もちろん、木材は生きている根ではないのでいつか朽ちます。
ただ、土壌が安定しているときに植物が生えて来たら
その周辺は崩れが起きにくくなっていくと思われます。
自然の力も借りる。
というよりは自然が良い状態になるように少しだけ手助けするだけ。
最後は自然が自ら良い状態にするはずです。

考え方がしっかりと身に着くと、こういう発想がたくさん起きてきます。
自然を見る視点が全く変わり、なるようになっている状態が見えるようになります。
そうなると楽しくてしょうがない。
雨の日なんか歩くのが楽しみになります。


小笠原の施工では資材の自由度があります。
木材を切るときも施工場所に合わせた資材を選べる。
選ぶのも楽しいんですよ。
それにしてもこの辺のモクマオウは随分と少なくなったもんだ。
風通しが良くなった。
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あえて曲がった木材を選んでます。
とくに、部分的に曲がっているものや両端の形状は気にします。
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実際の施工で「木を当てて石を詰めるだけです」なんて言ったら
馬鹿野郎と言われそうなほど、木材の固定は考えて苦労して、考えて苦労します。
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木を固定して・・・
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石を詰めるだけ。詰めるときもいろいろと考えることがありますがね。
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完成。
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施工も苦労しますが、長物は運ぶのが大変。
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これはちょっとバランスがわるい・・。
腰回りの筋肉を使うんです。
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約4mの木材。2㎞ほど運んだかな。
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黄色いカッパの兄ちゃんは神輿担ぎのベテランだった。
道理で様になっている。来年はもっと活躍できるゼ。
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流水による侵食を防ぐための「導流工」もいくつか作りました。
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これもモノだけ見たらとっても簡単だけど・・
どこに、どんなふうに、どれだけの水量を・・などなど、考えます。
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ぬかるみ個所の防止もやりました。
泥だらけになっても良い施工を目指します。
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ぬかるみ防止といえば木道が一般的ですが・・
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木材と石材を使ってぬかるみ防止もできます。
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こちらではひたすら岩盤をはつる人たちがいます。
ガイドさん二人。
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登山者をガイドするときにいつも気になっていた場所だそうです。
お客さんのためにガイドさんが道づくり。
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チェンソーを使えます」と言ったら難しいことをやってもらうよ。
小細工はけっこう必要なんだ。
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小学生も進んで作業をしてくれた。
イカ釣れなくてごめんな・・。
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小学生も頑張っている。大人が負けていられない。
だけど後ろで見ていていつ倒れるかと思ったよ。
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荷上げは一人で担げてナンボだ。
たかが50㎏だ。かっこ悪くても立ち上がれ!
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こんな感じで20日間、
いろいろな発想と整備方法と気力と体力を使って楽しんでいます。

一緒に作業してくれた方々には
近自然工法の考え方、視点が少しでも理解してもらえたらありがたいです。
というよりは整備を楽しんでもらえたら次があるような気がします。
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自分にとっては整備はつらいものではなく、楽しいものです。

楽しくて全力を使っちゃうので仕事終わりの釣りにはあまり行けなかった。
もう少し体力つけないと。